厳選されたパート
観光の基本なのである。
先述の「観光立国懇談会」の報告書には「住んでよし、訪れてよしの国マつくり」というサブタイトルが付けられている。
東京大学名誉教授の木村尚三郎先生の言葉である。
これを日本の観光政策の基本に据えるべきだということで、報告書のサブタイトルに使わせていただいた。
この言葉には観光カリスマとの共通点がある。
観光というのは「住んでよし」ということが基本であり、各地域での生活の質の向上が基本であるということである。
観光の基本は、そこに住んでいる人々が楽しむことであり、お客さんのために装いを凝らすことではない。
外から旅行・観光サービス来るお客さんのためだけの観光は底が浅くて長続きしない。
例えばイタリアのペニスへ行くと、もちろん観光客も楽しんでいるが、ペニスの市民自身が仮想舞踏会をやったりして楽しんでいる。
パリの普通の市民の生活スタイルが格好いいということで、一年間に五OOO万人もの人がパリを訪れている。
それは、その地に暮らす人々が自分たちの生活文化に誇りを持っているからである。
東北の山の中で猛吹雪の中をカンジキ履いて歩くのも、その地に住む人たちの生き様だと思えばそれはそれでいいし、九州の山の中の湯布院で、静かに家族で楽しむのがいいと思えばそれもいいわけである。
こう考えてくると、観光はいま、都会に住む人間にとって新しいふるさと-つくりの良い機会だと言えないだろうか。
観光の基本は「住んでよし、訪れてよし」だから、まず訪れて魅力があれば滞在してみる、農作業をしてみる、作物の生育について、自然環境について学んでみる、自分の健康について考えてみる、村の運営に参加してみる、しまいには住み着くこともある。
先の兵庫県・八千代町の場合、実際に定年になって引退したら二六万人もの人が住みたいと予約を入れている。
日本はいま、新しいふるさとが求められる時代になった。
日本の現在の農家数は二二五万戸、農家人口は九九O万人だが、農地の第一次相続権者は一四OO万人に上っており、その多くが都会で暮らしている。
この人たちがお盆とお正月に毎年帰省していたのがこれまでの日本の姿だったが、いま高齢の親世代がどんどん亡くなっているために、彼らは帰るべきふるさとを失いつつある。
そうした人々が新しいふるさとを求めるという大きな変化がいま日本で起きているもう一つ別の変化も起きている。
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